本研究における平成2年度の目的は手指によるトレ-圧接時に生じる圧接力の測定とその際のトレ-移動量の測定である。特に今回は測定システムの構成を決定し、そのシステムの精度測定などシステムの信頼性の確認が第1の目的になっている。システムの信頼性は基礎実験において確認された。 手指によるトレ-圧接時に生じる圧接力の測定は、模型実験ばかりでなく臨床的実験をも行っている。手指によるトレ-圧接時に生じる圧接力は術者によりかなりの変動が認められた。一般的には臨床経験が豊富な術者ほど圧接時のトレ-圧接力の最大値は小さく、また変動が少ない傾向が認められた。他方、臨床経験が乏しい術者ではトレ-圧接力の最大値は大きく、変動をかなり大きくなる傾向が認められた。すなわち臨床経験が乏しい術者では圧接開始とともに圧接力が上昇していき、すぐに最大値を示し、その後次第に圧接力が減少していく傾向が認められた。最大値を示した時期は術者が望んだ圧接位置にトレ-が達した時期と考えられる。しかし現在は移動量測定システムと同時計測を行なっていないので、トレ-の位置と最大圧が生ずる時期の時間的関係は確認はされていない。 移動量測定システムの構築やよびその信頼性は確認された。しかし印象採得時には、被験者および術者、移動量測システムのセンサの位置的関係が問題となっている。すなわち、トレ-は術者の手により保持されるため、測定に必要なマ-クの確認が難しいことになる。また圧接により印象材もトレ-よりトレ-外にでてくるため、マ-クを印象材が覆うために確認ができなくなることがある。これらの点については現在改善案を考えている。
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