本研究では平成2年度に、上顎無歯顎印象採得時の手指によるトレ-圧接力およびその際のトレ-移動量測定システムを検討し、予備測定を行った。 平成3年度は、上顎無歯顎粘膜の被圧変位性による印象圧のコントロ-ルを検討することを目的に、上顎無歯顎粘膜が受ける印象圧測定システムを確立し測定を行った。すなわち、無歯顎模型上の6部位に圧力センサを埋め印象圧測定を可能にし、されに定荷重負荷を可能にするジグを製作した。これらを用いることにより、上顎無歯顎における印象圧の部位別の特徴およびトレ-へ負荷される荷重量(手指によるトレ-圧接力)と印象圧との関係が明らかにできると考えられる。 印象採得時のトレ-圧接力および印象圧に関しては、上記の上顎無歯顎模型を用い印象材による差を測定した。印象採得時にトレ-に負荷された最大荷重は平均で、酸化亜鉛ユ-ジノ-ル印象材が1.6kgw、シリコンラバ-印象材が2.2kgw、ポリサルファイドラバ-印象材が2.4kgwであった。これらの結果は、昨年度臨床において測定した手指によるトレ-圧接力とほぼ同じであった。上顎の印象採得時に粘膜が受ける圧力は、トレ-の粘膜面への圧接時に最大圧100〜150gw/cm^2、印象材の硬化を待つトレ-保持時には20gw/cm^2以下であった。 今後はトレ-形態(スペ-ス、遁路)、トレ-支持位置などによる印象圧の変化を測定し、粘膜の被圧変位性により印象圧をいかにコントロ-ルすべきかを検討する予定である。
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