研究概要 |
平成2年度、外側翼突筋下頭(LPt)の筋長(下顎位)を変えて、等尺性筋活動を筋電図的に観察した結果、筋長の変化により筋電図の周波数にほとんど影響を与えないことを明らかにした。その結果は、顎二腹筋前腹における等尺性開口時の周波数変化と同様の傾向であったことから開口筋にのみ認められる筋電図的特徴と考えられた。そこで本年度は、さらにLPtの特性を明らかにする目的で、咬筋(Mm)、側頭筋後部(Tp)、顎二腹筋前腹(Da)をも加え、筋長および筋張力との関連を検討した。被検者は健常男子(22〜35歳)で、各筋につき6〜24名を選び、それぞれの筋に等尺性収縮を行わせるため、Mm,Tpについては、咬みしめを、Daでは、等尺性開口を、LPtでは、等尺性下顎押し出し運動をさせた。筋の長さは、Mm,Tp,Daでは顎間距離を口頭嵌合位から最大開口位までの4顎位、Lptでは下顎位を中心咬合位付近から最前方位までの3顎位をとらせることにより変化させた。筋の収縮力は、各筋の最大収縮とその3/4,1/2,1/4とした。各筋の等尺性収縮時のEMGを記録し、パワ-スペクトルの平均周波数と電位の実効値の相関および回帰直線から、各筋の特徴を検討した。その結果、筋の収縮強度を変えて得られたEMGからは、4筋ともに、筋電位が上昇すると周波数が低下する傾向が認められた。一方、筋の長さを変えて得られたデ-タからは、閉口筋群では電位の増加にともない周波数が上昇する傾向があり、開口筋群では逆の関係があることがわかった。従って、筋の収縮力の増加によるMotorUnの発火頻度や参加特性などは、開閉口筋ともに一致する傾向を示しているものと考えられるが、筋の長さを変えた場合には、それらは両筋で異なり、EMGのパワ-スペクトル分析による周波数ー電位の面からも、開口筋(屈筋)と閉口筋(伸筋)間の生理学的な特性の違いが示唆され、外側翼突筋下頭の開口筋としての特徴が一層明かとなった。
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