研究概要 |
従来、ras遺伝子の点突然変異による活性化について、様々な領域に関して検討されてきた。しかし、口腔領域に関しては、実際の臨床材料についてras遺伝子の活性化機序である点突然変異に関してまで調べているものは、少数しか存在しない。 そこで、平成2年中に以下の実験を行った。 1)口腔悪性腫瘍(5種類の細胞と6種類の組織)よりDNA,RNAを抽出し、サザン・ブロット法ならびにノ-ザン・ブロット法でras遺伝子(N,H,K)の増幅・発現状態を調べた。 2)DNA合成機でPCR法に用いる12種類のprimerを合成した。 3)5種類の細胞と6種類の組織のDNAを用いてPCR法により、ras遺伝子(N,H,K)の増幅、クロ-ニング、シ-ケンスを行い、ras遺伝子(N,H,K)の点突然変異の種類と頻度を検索を現在進めている。 現在のところ、以下の結果を得ている。 1)ras遺伝子(N,H,K)の増幅・発現状態を調べた結果、同一腫瘍中で、2種類のras遺伝子が同時に発現増強しているもの、増幅はしているが発現増強はしていないもの等が認められた。今後、点突然変異の有無との関連も非常に興味がもたれる。 2)舌癌組織より、ras遺伝子(Ha)の12番の核酸に点突然変異を認めた。詳細は更に検討中である。 今後、更に検体数を増やしていく方針である。また、シ-ケンスを行う本実験の方法は大変な労力を要するが、ハイブリダイゼ-ションを用いる方法に比較して、正確であり、かつ、広範囲の検索が可能なので、今後ともシ-ケンスを用いて研究を進めたい。
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