研究概要 |
1)96穴マルチプレ-トを使用した限界希釈法によって、MSK骨肉腫細胞から9種のクロ-ン株(C5.4D,C5.4E,C5.4G,C5.5A,C5.8B,C5.8G,C5.8H,C5.10C,C5.10H)を樹立した。 2)形態学的に、9種のクロ-ン株は多角形あるいは紡錘形の細胞で、各クロ-ン細胞株間に差異が認められた。また、同一のクロ-ン細胞においてもある程度pleomorphismが存在した。 3)9種のクロ-ン細胞のアルカリフォスファタ-ゼ活性はMSK母細胞の16%から308%と著しい格差がみられた。これらは各クロ-ン細胞の産生するハイドロキシプロリン量、副甲状腺ホルモン(PTH)反応性との間に相関が認められなかった。しかし、各々の細胞株をラットへ再移植した場合、形成された骨肉腫の肺転移の確率と細胞の持つ酵素活性の強弱は相関すると考えられた。すなわち、高いアルカリフォスファタ-ゼ活性を持ったクロ-ン細胞を移植した場合、ラット肺に高率に転移腫瘍の形成が認められ、逆に低アルカリフォスファタ-ゼ活性株は転移が認められなかった。 4)in vitroにおいて形成されたハイドロキシプロリン量も各クロ-ン間で格差がみられたが、これらはそれぞれの細胞株の飽和細胞密度と相関した。このことから、少なくとも各クロ-ン細胞のコラ-ゲン合成は細胞の多層化によって促進される可能性が示唆された。 5)副甲状腺ホルモン(PTH)に対する反応性をcyclic AMP量の上昇によって測定すると、9つのクロ-ンは全て母細胞株MSKより反応性が高く、最も反応性のある亜株でMSK細胞の7倍のcyclic AMPの上昇を認めた。 6)PTH高反応性の亜株はラットに対するin vivo移植において豊富な軟骨を含む骨肉腫を再形成した。従来からPTHの標的細胞は分化した骨芽細胞であると考えられていたが、我々の実験結果から、それ以前の分化の段階にある軟骨形成に関与する細胞が高いPTH反応性を有する可能性が示された。 7)9つの亜株のうち数株について細胞が培養液中に放出するコラゲナ-ゼを測定し、高いコラゲナ-ゼ活性を検出した。
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