研究概要 |
シェ-グレン症患者44症例の唾影像のフラクタル次元を測定した。正常患者群44症例を対照とした。各群共にフラクタル次元と年令との相関が認められなかった。フラクタル次元のヒストグラムは、両群の間で統計的な有意差があり、正常群のフラクタル次元の平均値1.64に対して、患者群では1.39と低下していた。さらに、患者群を唾液分泌管の異常を示す点状陰影像のサイズにより分類すると、陰影像径1mm以下の患者のフラクタル次元は、同1mm以上の患者と比較して、統計的に有意に大きな値を示した。 シェ-グレン症モデルマウス系統NZB/WF_1の耳下腺損傷を、週令を追って調べた。本教室で確立したマウス耳下腺の唾影像撮影法により得られた所見は、介在部導管数の減少、線条部導管の拡張、点状陰影像、腺葉の欠損陰影像の順序で,マウス週令と共に強調することが確認された。点状陰影像を呈したマウスは10週令で18%,20週令で55%,30週令で100%に達した。この結果は、耳下腺組織標本の解析より、腺房細胞に多倍数体の増加が10週令マウスで確認した報告(吉野,1988)も良く対応する。これらの実質の変化に対して、シェ-グレン症の病理診断の指標に採用される、導管周辺部へのリンパ球浸潤,Focus形成、は20週令で0,30週令で8個/切片,40週令で21個/切片であった。耳下腺の実質(腺管及び導管)の変化が、間質の所見に先行することが明らかとなった。 理論的に作図した樹状パタ-ンのフラクタル次元の解析により,同次元の値を左右する因子について考察した。分枝単位のサイズ,分枝比,分枝単位の分枝点ー幹間の荷重,分枝角度,分枝単位間の干渉,分枝の次数,次数の異なる分枝単位間の荷重などの多様な因子である。これらの因子は測定に用いる“物指し"のスケ-ルに依存して次元値に寄与する。
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