我々は昭和63年以来、X線CTに組みこまれた3D(3次元画像)ソフトを用いて顎口腔領域疾患の3D像を構成し、観察を行ってきた。 平成2年度においては、顎関節部撮影補助装置の改良と、その性能の検定に力点を置き、下顎骨の3D処理条件を検討した結果、下顎骨の部位によって条件がかなり違うことを知り、またスライス厚が異なれば、3D像の表示効果に大きな影響を及ぼすこともわかった。 平成3年度に入り、3Dソフトに一部改良が加わり、3D像から観察に不要な部分を切りとるカッティングという機能が加わったので、この手法に基き、手術のシミュレーションを試みた。 今年度に入ってから、処理条件特にCT値を適当に選択することにより、顎骨全体の輪郭を辛うじて示す程度の極めてまばらなるD像(輪郭像と仮称)の描出出来ることを知った。 この知見の応用として、下顎骨の輪郭を示す3D像(輪郭像)の中に、病巣の3D像を併せて描出することに成功した。これにより顎骨内における病巣の位置・形・大きさ・方向が一目瞭然に理解出来、同時に病巣体積が表示されることになった。顎骨の輪廓像の体積は極めてわずかで、病巣体積の測定結果にほとんど影響しなかった。 これを開窓手術病例に応用して、手術後病巣の縮少して行く様を3D像の上で観察し、その術式と臨床応用例について学会に報告した。 術式が定着してから日数が浅いため、未だ多数症例の成績は得られていないが、従来単純撮影による定性的な見方しか行われなかった顎骨疾患のX線診断法に、新らしい手法を来たしたものと考えている。
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