研究概要 |
唾石症の単純X線写真検査では,パノラマ撮影法,咬合法歯軸方向投影および後方斜入方向投影を同時に撮影観察することで,おおよその位置決定が行える。しかし,唾石などによって惹起される炎症性の唾液腺組織損傷の程度は単純X線写真像では判断することは不可能であり,治療法の選択にあたってはより正確な唾石の位置および唾液腺組織の形態的な変化と機能的な障害の様相から組織の損傷の程度を判断するために唾液腺造影検査の必要性が生じてくる。 唾液腺造影検査を行った122症例の唾影像について詳細に検討を行い,唾石の位置や唾液腺組織の損傷状態の診断など治療法の決定に有効であったと判断されたもの100症例を対象に以下の研究を進めた。 1.唾影像の形態を導管系と腺系に分けてその描出の状態により,1型:導管系・腺系が共に明瞭に描出されているもの(49症例),2型:導管系は十分に描出されているが腺系の描出が不十分なもの(37症例),3型:唾石から遠心の描出がされていないもの(14症例)の3型に分類した。 2.画像計測:唾影像の分枝の形態的複雑性の変化を腺門部下方からの導管および腺系の第一,第二分枝の中央部分をトレ-スし,大きさの異なる正方形で細分する方法を用いてフラクタル次元の計測を行った。 対象とした症例は,唾石による影響が微少で形態変化もほとんどなく正常唾影像と鑑別が困難な1型の15症例と,静止性骨空洞の唾影像31症例を正常者群として用いた。後者の唾影像はその分枝の形態から樹枝状型(13症例),中間型(7症例),放射状型(11症例)の3タイプに分類した結果,フラクタル次元は樹枝状型(1・27),中間型(1・29),放射状型(1・31)の順に低かった。正常者群全体のフラクタル次元は1・30で唾石症症例に1・22との間では有意な差がみられ,客観的評価の指標として有効であることが示唆され,臨床診断に用いられると考えられた。
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