研究概要 |
平成2年度の実験において、妊娠12〜14日のラット母獣にアルキル化剤(NメチルNニトロソ尿素)投与により、胎仔に口蓋裂や小顎症の発現が認められる事が確認された。平成3年度は、これらの奇形仔の生後の生存の可能性を追求する事を目的として、薬物の投与量、投与時期、飼育環境等に検討を加えた。しかしながら、これらの奇形を発現する仔ラットは、手足の奇形も伴い、その他代謝の異常も伴っているものと思われた。その結果、出生後短時間で死亡し生後の成長、発育の研究モデルとしてはかなり困難と考えられた。そこで次の段階として、顎顔面顔蓋に限局した奇形を有する仔ラットを作製する目的で胎仔外科の手法を用いた実験系の開発を行った。即ち,胎齢17日のラット母獣を開腹し,子宮壁及び羊膜を切開して胎仔の鼻を子宮壁より露出させ、熱した針金にて胎仔の左側口唇および歯槽部に熱傷を与えた後、胎仔を子宮内にもどして子宮壁を縫合することにより,唇顎裂のモデル動物の作製を意図した。このようにして母獣1腹あたり胎仔2匹について処置を施した後,自然分娩された仔ラットについて観療を行うと、胎仔手術において羊水の流出が少なかった個体においては、口唇部の実質欠損を伴う裂隙を除いては、外表奇形は認められなかった。また体の大きさ、動き等も胎仔手術を行った他の同腹の個体と変わる所は無く、鼻口唇部の裂隙以外の異常は無いものと思われた。胎仔手術を施した仔ラットは、分娩後は元気であったが、吸啜動作は行わず生後2日後に死亡した。今回は、仔ラットの人工哺育は行わなかったが、胃チュ-ブ等を用いてラットの人工哺育についてはいくつかの報告もあり、今後、本実験系によって得られた口唇歯槽部に裂隙を有するラットの成長、発育について観察、検討を行う事は将来的に十分可能と思われた。
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