研究概要 |
この実験の目的は、骨吸収及び骨形成現象において、主要な役割を果たすと考えられている破骨細胞と骨芽細胞の関係を明らかにし、矯正力によりその関係がどのように変化するか検討することである。そこで本年度は、新しく開発した形成過程に骨芽細胞の混入のない、破骨細胞形成系を用いて、破骨細胞の形成過程に対する骨芽細胞の効果について研究した。培養骨芽細胞として、株化されたMC3T3ーE1細胞を用いた。このMC3T3ーE1細胞は、培養日数の違いにより細胞の性格、すなわち未分化な骨芽細胞から分化した骨細胞に分化することが知られている。 結果 1、MC3T3ーE1細胞および初代培養骨芽細胞様細胞は,破骨細胞の形成を抑制した。また、その効果は、産生する液性因子を介するものであった。 2、MC3T3ーE1細胞の破骨細胞形成に及ぼす効果は、MC3T3ーE1細胞の分化度により異なった。 3、MC3T3ーE1細胞の産生する液性因子は、少なくとも二種猿あり、一つは分子量3,000以下の以下の破骨細胞形成抑制因子で、もう一つは分子量3,000以上の形成促進因子であった。 4、この破骨細胞形成抑制効果は、骨芽細胞により特有なものであることが示唆された。 5、MC3T3ーE1細胞の破骨細胞形成抑制作用が、indomethacin処理により一部消失した。さらに、MC3T3ーE1細胞がprostaglandin E_2(PGE_2)を産生することから、MC3T3ーE1細胞の産生する破骨細胞形成抑制因子の一部はPGE_2である可能性が考えられた。
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