研究概要 |
当初の計画通り,ラットの下歯槽神経の一部をネンブタ-ル麻酔下で頬側より露出し,中枢側で切断した。30分間保生後,2極電極によりひっかけ電気刺激をした。刺激の条件は各種試みた結果,10V,0.1msec 5分間とした。周波数は,0.2Hzとした。電気刺激の条件については,各種予備実験を行ない,色素の漏出の程度や神経の損傷,レ-ザ-照射との関係などを考慮し設定した。手術から刺激にいたる過程では,神経に対し必要以上に機械的刺激を加えないように十分注意した。 刺激開始10分前に色素エバンスブル-を静注すると,刺激終了後オトガイ部皮下組織内で色素が血管より漏出する。これは電気刺激が下歯槽神経を伝わり,その支配領域の血管の透過性が増すためである。いわゆる神経原性の炎症である。その漏出した色の濃度と範囲を,画像解析装置Nexusを用いて測定した。 その結果,レ-ザ-を10分間,刺激部位全体に向けて照射すると,色素の漏出が抑制されることが認められた。このことは,レ-ザ-照射により下歯槽神経の刺激伝導がある程度ブロックされることを示している。 さらに,オトガイ部皮膚を切除しGAMSE(1980)らの方法に従い毛細血管より漏出した色素を抽出し定量したところ,レ-ザ-照射側では対照側に比して約50%減少していた。 今後は,下歯槽神経が分布する歯髄に注目し,電気刺激による歯髄血管の変化,起炎物質の放出などがレ-ザ-照射によりどのように影響されるかを観察し,象牙質知覚過敏症における低出力レ-ザ-の作用機序について検討する計画である。
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