研究概要 |
レ-ザ-照射による疼痛緩和のメカニズムは,ラットの脳切片を用い検討した結果,神経細胞膜の膜電位の過分極と膜の安定化による興奮性の抑制と,刺激によってもたらされた細胞膜の損傷の修復と考えられる. そこで今回は,以下の2点について検討を加えた. (1)臼歯部歯髄へ分布している下歯槽神経を電気刺激することにより歯髄にオトガイ部でみられたような血管透過性の変化が見られるはずである.この歯にレ-ザ-を直接照射すると,より臨床に近い条件でレ-ザ-の効果を見ることができる. レ-ザ-照射の効果判定は,顎骨の脱灰組織標本を作成しHE染色をし血管及び色素の漏洩について観察した.その結果,対照群では歯髄の血管の拡張が観察された.色素の漏洩については十分に観察できなかった.レ-ザ-を照射した場合,歯髄の血管の形態に明かな差は認められなかった.これは神経を刺激しながら臼歯へレ-ザ-照射するのが予想以上に困難であり,照射が確実に行われたかどうかによると思われる. (2)ラット背部を剃毛し左右対照に創を形成し,片側のみレ-ザ-を一日おきに30分間照射し創の大きさを画像解析装置により測定した.その結果,レ-ザ-を照射した場合非照射対照側に較べて治癒が早く,特に3日目から9日目では統計学的に有意な差が認められた.また組織学的にも,レ-ザ-照射側で結合織の形成が対照側に比して多くみられた. さらに創傷治癒の過程で重要な役割を果たしていると考えられているTGFーβがレ-ザ-照射による治癒促進作用に関与しているかを検討した.TGFーβの測定はアッセイキットを用いてELISA法により測定した.その結果,レ-ザ-を照射するとTGFーβの活性が対照と比べて有意に高かった.
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