研究概要 |
小児歯科学にとって歯ならびに歯周組織の形成と発育について研究することは重要なテ-マである。特に間葉系結合組織細胞を主体とする歯胚の基質形成には、growth factorの1つであるアスコルビン酸の密接な関与が知られている。そこで歯周組織中でも歯根膜由来の線維芽細胞におけるLーAscorbic acid(ASA),安定型のLーAscorbic acid 2ーPhosphateの影響について検索するために,ヒト乳歯の歯根膜由来の線維芽細胞(HPLFーY),ヒト永久歯の歯根膜由来の線維芽細胞(HPLF)の継代培養細胞を用いて,各々の細胞の増殖,分化ならびに細胞接着、伸展性について比較検討を行った。 HPLFーY,HPLFは神奈川歯科大学小児歯科外来より咬合誘導上の目的で抜去した歯根2/3以上残存する乳歯および歯根完成後の永久歯より採取した歯根膜を斉藤らの方法によりmigrateした細胞を継代培養を行った。得られたHPLFーY,HPLFを2mg/mlFCSP、50μg/mlAscorbic acidを含むDMEMで1日間培養後、Ascorbic acid無添加の培地を2日毎に交換し、7日間培養後、細胞増殖の指標であるDNA量,細胞分化の指標であるALPase活性について検索した。さらに,HPLFーY,HPLF培養後ASA無添加のDMEM中に25μg/mlの濃度に希釈したASA,ASAーPを2日毎に培地を交換し、7日までの各々の上清(CM)を採取し,その後,CMを疎水性のwellにcoatingし,3HーTdR標識HPLFーY,HPLFをこれらのwellにinoculateし3hの培養を行った。その後、plateの底面には付着した細胞を位相差顕微鏡により形態を観察し、3HーTdR標識の付着細胞について3Hの放射活性を測定した。 その結果,AsA,AsAーPのHPLFーY,HPLFに対する(1)細胞増殖における効果は、共に認められた。(2)ALPase活性の上昇,(3)さらに細胞の接着,伸展活性物質の分泌量は、HPLFよりもHPLFーYでより効果的であることを確認し,その効果は、細胞間で性質に相異があることを確認した。
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