研究概要 |
Corticotomyは外科矯正のうちでも侵襲が少ないとされている.しかし,本法と顎整形力を併用した報告はほとんどみられない.そこで顎変形症患者を想定し,Corticotomy応用の有用性を確立するために,ニホンザルを用いてその効果について5つの研究を行って検討した.また,臨床に1例を応用した. 全上顎骨後方移動 オス6頭を用いCorticotomyを併用し,効果判定のために模型,頭部X線規格写真撮影等の分析,組織学的検討を行った。その結果,対照群と比較して上顎骨歯槽部の後方移動が著明に認められた。また,strain gaugeとskullを用いてひずみ実験を行った結果,各縫合部への負荷は減少することが認められた。 上顎骨前方歯槽部の後方移動 メス7頭を用いて応用した実験群においては,上顎骨前方歯槽部の後方移動が著名に認められた。 上顎骨前方牽引 オス5頭を用いて応用した実験群では上顎骨の歯槽基底全体が著明に前方移動した。 上記に共通の所見として (1)対照群の縫合部では骨の活発な改造現象が観察されたのに対し実験群では骨の改造現象で穏やかであった。また,ひずみ実験の結果からも同様の所見が示唆された。(2)歯周組織においての変化は同じく対照群と比較して実験群の方が変化が少なかった。 結論:対照群においては整形的牽引力が拡散してしまうのに対して,実験群では緻密骨が離断されているために牽引力が拡散しにくくなり,効果的に歯槽部を前後方向に移動させる力として作用したと考えた.また,34才の女子に本法を応用して矯正治療を行ったところ,治療期間が短縮され,良好な結果を得ることが出来た.
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