Na^+チャンネルの化学構造と機能相関の解析を段階的に進めるため、今年度は、ラベルの際の反応特性が異なる二種のニトロフェノキシ体を成合し、これらの光反応基を組み込んだNa^+チャンネル用の光ラベル試薬を合成した。 1、新規光反応基の開発、(1)反応性が高いカルベンの前駆体としてファニルトリフルオロメチルジアジリンを基本骨格とし、ラベル部位解析に必要な種々の官能基が親電子置換反応により導入できる構造としてフェノキシジアジリンを合成した。これらはタリウム化を経てラベルの検出に有用なヨ-ド体、ニトロ体へとさらに誘導できた。(2)高反応性の化学種をラベルに用いる利点は、官能基の種類を問わずに反応することにある。一方、反応に選択性がある場合は反応対象の官能基が結合部位にないとラベルできないが、いったんラベルが成立すると修飾残基の予測がしやすい長所がある。このように反応に選択性がある化合物としてフルオロニトロアニソロアニソ-ルに着目し、ラベル試薬の調製に有用なフルオロニトロフェノキシ誘導体の合成を行った。 2、Na^+チャンネル特異的光ラベル試薬の合成、(1)μーコノトキシンGIIIAにニトロフェノキシジアジリンを導入した光反応性のコノトキシンは結合定数が11ー18nMと良く、光ラベル試薬として有望であった。(2)反応に選択性があるフルオロニトロフェノキシ基を持つテトロドトキシン誘導体を合成し、光反応性を検討した結果、Na^+チャンネル上の結合部位近傍には、このラベル試薬が反応する求核性基がないことが明かとなった。 光ラベル試薬を合成する段階で、補助金により購入した高速液体クロマトグラフ一式は、生成物の精製、分取に不可欠であり、研究遂行上極めて有効であった。今後はこれらをNa^+チャンネルに適用しラベル部位の解明を一段と推進していきたい。
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