研究概要 |
鹿児島県離島部から沖縄県琉球列島にかけて生育するアカネ科Ophiorrhiza属植物チャボイナモリから新規配糖体,Chaboside C_<28>H_<32>N_2O_<10'>を得た。各種スペクトル手法を用いることによって構造の解明を行った結果,本物質が強い制癌活性で知られるカンプトテシンの構造を基本骨格として有し,そのA環部にメトキシル基とβーグルコシルオキシ基を持つ化合物であることがわかった。続いてNOESY,COLOCなどNMRの手法を応用することによりメトキシル基が9位に配糖体結合が10位に存在していることを明らかにした。Chabosideは天然からはじめて見出だされた配糖体型のカンプトテシン系化合物であり,更にカンプトテシン類でA環部に2つの酸素官能基を持つものが天然から見出だされたのもこれが最初である。 続いて上の推定構造を確証することとCー20位の絶対配置を明らかにする目的をもって,Chabosideの全合成研究に着手した。合成の基本方針としては中国の研究グル-プとアメリカリサ-チトライアングルのWallらによりそれぞれ独立に開発され,第一製薬の研究グル-プにより絶対配置制御の点で改良が加えられた合成方法を利用することとした。まず田川(第一製薬)の方法によりキラルなCDE環部を合成した。一方のAB環部については,oーバニリンを出発物質とし,脱メチル化後2位の水酸基を選択的にメチル化,続いてニトロ化によりアルデヒドのオルト位にニトロ基を導入,更に3行程を経て目的とする合成中間体2ーMethoxyー3ーbenzyloxyー6ーaminobenzaldehydeーethyleneketalを得ることができた。ここに得た2つのセグメントについて縮合を行い,目的とする5環性化合物を得た。現在残る3行程,すなわちA環部保護基の除去,アセチル糖の導入,脱アセチル化,について予備実験を行っている。
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