当初計画した経路により、四種のカルボン酸(1aーd)またはそのエステル体(2aーd)を合成した。なお、フッ素化段階には、ジエチルアミノ三フッ素硫黄(DAST)を適用した。また、化合物(3)を経由する目的物へのル-トは好結果を与えず、今後の検討課題として残された。 得られた(1aーd)または(2aーd)を、secーブチルエステル、αフェネチルエステル、およびαフェネチルアミド誘導体(4ー6)とし、対を成すジアステレオマ-間の ^<19>F NMRにおける化学シフト差(Δδ)を算出した。また、MTPAに関しても同様に三種の誘導体を合成し、Δδ値を測定した。その結果、化合物cとdについては、MTPAよりも遥かに大きなΔδ値を与えることが分かった。その原因は立体的因子によるものと思われる。 このようにして、Δδ値的にはMTPAを凌ぐ化合物の合成に成功したが好結果を与えたcおよびdの場合にはフッ素原子のα位ならびにβ位に水素が存在するため、 ^<19>F NMRにおいてシグナルが多重線となって現われる不都合が生じてきた。そこで、水素を含まず、しかも電気求引性の置換基を含む化合物として7ー9に着目し、その合成を試みた。しかし、7と8の場合には、対応するアミド体から、また、9の場合は、対応するエチルエステルから、それぞれ対応するカルボン酸への加水分解反応が進行しなかった。
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