研究概要 |
イリドイド系化合物は薬用植物成分としてに広く分布している。なかでも、抗腫瘍活性を始め種々の生理活性を有するインド-ルアルカロイドの非トリプタミン部分がイリドイド配糖体より生合成されることはよく知られている。従って、イリドイド配糖体の基本骨格であるイリダン骨格の形成機構を酵素レベルで解明することは、イリドイド関連物質の生合成研究にとって非常に重要なことである。そこで、本研究ではインド蛇木の培養細胞を酵素源として以下の研究を行い、ほぼ初期の目的を達した。 1.鎖状モノテルペン脱水素酵素。イリダン骨格を形成する閉環反応の鎖状生合成前駆物質である10ーhydroxygeraniolから10ーoxogeranialの形成にあずかる脱水素酵素を活生収率10%、87倍で、かつ単一なタンパク質として単離した。本酵素は分子量44,000のモノマ-タンパク質で、等電点pH5.4、亜鉛原子を含み、NADP(H)依存性である。Ca^<2+>,Mg^<2+>の添加は酵素反応を活性化し、チオ-ル試薬に阻害効果が認められた。本酵素反応の立体化学的過程を(4R)ー[4ー ^2H]NADPHを用いて調べた結果、proーR特異的であることが分かった。本酵素のN末端アミノ酸配列19個は、植物から単離されている他のアルコ-ル脱水素酵素との間に相同性は認められなかった。 2.イリダン骨格閉環機構。鎖状前駆体10ーoxogeranialから環状前駆体イリドジア-ルへNADPH存在下閉環反応を触媒する酵素を440倍に精製した。本酵素は分子量118,000の4量体であることが明かとなり、NADPHはNADHより2倍高い活性を示した。本酵素が還元的機構により閉環反応を触媒することは、環状モノテルペンの生合成における、geranyl pyrophosphateが関与する従来の閉環機構とは異なり新しいタイプのものである。この酵素を単離し、反応機構を解明したことは非常に意義あることである。
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