クルミ科植物"黄杞"の葉は、中国では甘いお茶として飲用されている。本研究用は、その葉の化学成分の研究をおこない、アグリコン(タキシフォリン)の2位および3位の立体異性体である4種のジヒドロフラボノ-ルモノラムノシドを単離し、そのうちの(2S、3S)ータキシフォリンのみ甘味を示すことを明らかにした。このように、アグリコンの立体配置が、この系統化合物の甘味発現に大きく関与しているものとおもわれるが、その詳細については不明である。本研究では、ジヒドロフラボノ-ル系配糖体の甘味と構造の関係をより明確にすることを目的に実験を行なった。 以上の目的にしたがって、本年度は、さらに同葉からもう1種の甘味を示すCOMPOUND Eと仮称したジヒドロフラボノ-ルの配糖体を単離し、以下のような知見を得た。COMPOUND Eは各種スペクトルデ-タ、加水分解等の結果より(2R、3R)ータキシフォリンのグルコシルラムノシドであることが明らかとなった。次に、COMPOUND Eの各種アルカリ条件下でのアグリコンの2位、3位の異性化を検討し、ピリジンー水で加熱処理することによリ、COMPOUND Eの(2S、3S)異性体を得、この化合物も甘味を示すことを明らかにした。このように、タキシフォリンのモノラムノシドは(2S、3S)体のみが甘味を示し、一方、グルコシルラムノシドでは(2S、3S)および(2R、3R)体いずれの場合も甘味を示すことから、本系統化合物では、2つの因子、すなわちアグリコンの立体配置と結合する糖の数が甘味の発現に重要な役割をもつものと思われる。なお、COMPOUND Eの異性化反応により、他に2種の異性体生成は認められず、これらの甘味については不明である。
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