クルミ科植物黄杞の葉は中国では甘いお茶として飲用されている。本研究者はすでにその甘味成分について研究を行ない、ジヒドロフラボノ-ル配糖体であるネオアスチルビンが甘味の本体であることを明らかにした。この系統の化合物が甘味を示すことが判明したのは最近のことで、将来新規甘味料としての利用が期待される。本系統化合物の甘味と化学構造の関係をより明らかにする目的で実験を行った。前年度はさらに上記黄杞の葉の成分研究をおこい、甘味物質としてすでに得られているネオアスチルビンの他に、あらたに新規甘味物質としてフアンチオシドE命名した化合物を単離し、その構造を決定した。さらに、云南に野生する他の黄杞属植物3種についての甘味成研究をおこなった。本年度はジヒドロフラボノ-ル配糖体の全合成について以下のように検討を行なった。2、4、6ートリヒドロキシフェニ-ルメチルケトン(1)を出発物質としてHMPAの存在ベンジルクロリドと反応し、4ーベンジル体(2)を得た。化合物2をさらにメトキシメチルクロリドと反応し、化合物2のメトキシメチル導体(3)を得た。一方、3、4ージヒドロキシベンツアルデヒドから3、4ーベンジルベンツアルデヒド(4)を合成し、このものと先程の化合物3をアルカリ存在下に縮合させ、化合物5を得た。つぎに、化合物5を過酸水素ーアルカリの条件下でC環形成のための閉環反応を行ない、5、7、3'、4'ーテトラキス(ベンジルオキシ)フラバノ-ル(6)を合成した。つぎに、触媒存在下、化合物6とアセトブロモグルコ-スを反応し、5、7、3'、4'ーテトラキシ(ベンジルオキシ)フラバノ-ルー3ーグルコシド(7)を合成すことができた。あと脱ベンジン化によりタキシホリンのモノグルコシドを得ることができるが、配糖体化の収率が低いため現在検討である。
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