淡水真珠毋貝のイケチョウガイの精子及び卵子に含有される糖脂質においては、配偶子細胞の両者で著しい構造の相異が推測される。現代の脂質生化学は構造研究と共に細胞表面物質としての糖脂質の機能を追い求めている。堀等はイケチョウガイ精子特有の酸性糖脂質Lipid IVの構造をGlCA4Me(1→4)FuC(3←1)GalNAC3Me(1→4)GlCNAC(1→2)Man(2←1)Xyl(1→3)Man(1→4)GlcーCerと決定した。モデル化合物の合成並びに全合成を目標とし、個々の修飾ならびに縮合を逐次行った。合成指標である八糖は非還元末端三糖部と還元末端五糖部とから合成される得る。前者にはグルクロン酸の4位、Nーアセチルガラクトサミンの3位にメチル基が存在することを、更にはこれら二種の単糖がそれぞれフコ-スの4位と3位とに選択的に結合させねばならないという難問を有していたが供与体として大量合成するべき材料は充分に確保できた。一方受容体としての五糖は数10mgに関しては、既に合成に成功していたが、今回種々反応条件の改良を加え量産態勢を可能とした。既ち先ず2位遊離のマンノ-スをキシロシル化し、アセトリシス、ブロム化を経て得た二糖供与体をシルバ-ゼオライトを用い、4位水酸基遊離レボグルコサン誘導体と選択的βーマンノシデ-ションを行ない三糖とした。従来βーマンノシデ-ションは選択性が非常に悪いとされているが、今回シルバ-ゼオライト、シルバ-シリケ-トを調製することにより難関は突破された。尚キシロ-ス含有オリゴ糖に関し、キシロ-スのコンフォメ-ションが種々論議されている為、この三糖或いは二糖誘導体についてX線構造解析を行なっている。次いで三糖マンノ-スの3位に、更に1分子のマンノ-ス誘導体を縮合後、脱クロロアセチル化し四糖性受容体にグルコサミン誘導体を縮合させ目的とする五糖誘導体とした。今後五糖誘導体は非還元末端三糖誘導体を用いて八糖誘導体へ導き、それらの抗原性を調べ、卵レクチンとの受精機構解明を行う。
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