研究概要 |
近年、細胞の認識に係わる現象に、様々な形で細胞表層の糖鎖が関与することが示唆されている。本研究はイケチョウガイの精子から見い出されたLipidivの受精機構における役割を解明する一つの手段として八糖GlCA4MEβ(1→4)〔αGalNAC3Me(1→3)〕αFuC(1→4)βGlcNAC(1→2)αMan(1→3)〔βXyl(1→2)〕βMan(1→4)βGlCの化学合成を目標とすると共に、合成に際して還元末端五糖誘導体は、Lipid IV以外の一連の糖脂質部分共通糖鎖構造、即ちLipid I,II等を含んでいるので、進化上の観点からも興味深く、それらも併せて合成する目的から系統的な経路を目指した。先ず、非還元末端三糖ブロックに関しては、従来法に基づき3ー0ーメチルガラクトサミン誘導体をフコ-スに縮合させ、引き続き4ー0ーメチルグルクロン酸と縮合させ非還元末端三糖誘導体とした。この際グロクロン酸誘導体について改良を加え、従来の11段階に対し7段階と効率且つ収率の上で満足できる結果を得た。一方、還元末端五糖ブロックの合成に関しては、従来法を改良し、1.6ーアンヒドログルコ-スをβーマンノシデ-ション化し得られた2位水酸基遊離二糖にキシロ-ス誘導体を縮合させ高収率で三糖を得た。以下従来法に基づき五糖誘導体とし、非還元末端グルコサミン部の4位を選択的に遊離とし、先に得た非還元末端部三糖ブロマイド体を、シアミ化水銀存在下、縮合反応を行い、八糖とした。得られた八糖についての脱保護は現在進行中である。一方、還元末端部五糖に関連した四糖、三糖、二糖の合成は、単糖受容体に、単糖供与体を順次縮合させ、各々、二、三、四糖誘導体を系統的に合成し、脱保護を行った。これらすべての化合物についての抗原性については現在検討中であるが、その活性本体、即ち抗原決定基が明確になされれば、その後更にアフイニティ-カラムへの応用、これを用いる卵レクチンの分画等を通じて受精機構の解明の一翼を担うことができると思われる。
|