研究概要 |
エストロゲンは,生体内で主に2位または16α位に水酸化を受ける。2位(および4位)水酸化反応の成績体であるカテコ-ルエストロゲン(CE)は、中枢神経系においてカテコ-ルアミンのアンタゴニストとして作用することが知られている。CEは、肝ではグルクロン酸抱合を受け、また血中ではカテコ-ル0ーメチル基転移酵素(COMT)によりグアヤコ-ル型に変換され、活性を失うと考えられている。しかし最近、後者に2位水酸化酵素阻害作用が認められたことから、COMTを介したフィ-ドバック機構の存在の可能性が示唆され、注目されている。 松木は、ガスクロマトグラフィ-/マススペクトロメトリ-によるCEを基質とした血中COMT活性測定法を開発した。次に本法をラットに適用し、2位/3位メチル化率はほぼ一定であるにも関わらず、SD系に比べFischer系、Wister系では4位/3位メチル化率が大きな値となることを見いだした。また、南原は肝におけるグルクロン酸抱合に着目し、2ーヒドロキシエストリオ-ルの各種抱合体を調製後、高速液体クロマトグラフィ-を用いて抱合形式に検討を加えた。グィニアピッグでは、3位抱合体のみが生成するのに対し、ラットでは2位が主生成物であった。さらにcytochrome Pー450誘導剤でラットを処理した場合、phenobarbitalでは微増であったが、2位水酸化酵素を誘導する3ーmethylcholanthreneでは抱合体の生成量が約3倍に増加することを明らかにした。 一方、ヒトにおける16α位水酸化反応の成績体である16αーヒドロキシエストロン(16αーOHE_1)は、末梢において強いエストロゲン作用を示すことが知られている。これは、16αーOHE_1がレセプタ-と安定な共有結合体を形成することと関連していると考えられている。宮入は、この共有結合体の構造を明らかにすることを目的として、16αーOHE_1とリジンのεーアミノ基を介した結合体を合成し、標品として分析化学的検討に用いている。
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