研究概要 |
イオン性環境汚染物質を対象に次の成果を得た。1.自動前処理イオンクロマトグラフの開発:環境試料の間接吸光度検出イオンクロマトグラフィ-で妨害を生ずる成分をカラムスイッチングを導入して除去する自動分析システムを試作した。これを用いて,環境水の陰イオン分析を妨害するアルカリ土類金属が完全に除去できた。2.選択的ピ-ク増感イオンクロマトグラフィ-の開発:酸性溶離液を用いてイオン交換カラムからの成分の溶出を電気的に検出すると,システムピ-ク近傍の成分ピ-クは増強され,遠ざかるほど抑制され,その効果は間接吸光度検出より大きいことを見出した。この原理に基づいた標記の新IC法を開発した。この方法を水質の富栄養化と密接に関連すると言われているオルトリン酸に適用し,従来の方法より1桁以上高感度で,しかも共存成分の妨害が少ない分析法を開発できた。3.イオン排除クロマトグラフィ-による炭酸分析法の開発:溶離液中に溶解する大気由来の二酸化炭素を窒素パ-ジ法で除去すると,炭酸の微量分析が可能になり,しかも有機酸との同時分析もできた。4.光学活性有機酸の分析法の開発:光学活性な有機酸と銅の錯体を陰イオン交換カラムの溶離剤とすることにより,これと配位子置換する光学活性な有機酸を分離し,間接吸光度検出する方法を開発した。この方法は,溶離剤に用いる有機酸の種類によって,選択性の変化が発揮できると期待された。 非イオン性環境汚染物質を対象に次の成果を得た。1.環境変異原のニトロピレン類が電気的あるいは化学的にアミノピレン類に還元され,蛍光検出及び化学発光検出できることを明らかにし,また微量分析の妨げとなる酸化分解を抗酸化剤で抑えることに成功した。2.これを応用して,吸光度検出や蛍光検出を用いたHPLCのみならず,GC/MSよりも更に感度の高いニトロピレン類の化学発光検出HPLC分析法を開発した。
|