研究概要 |
肝臓は腎臓と並んで薬物を体内から除去するための重要な処理臓器である。薬物と肝臓との相互作用(肝局所動態)を速度的に解明する手法はその数値的取扱いの制約から、大幅に後れていた。我々は高速ラプラス逆変換(FILT)と最小二乗法を組み合わせた解析プログラムMULTI(FILT)をFORTRAN77で開発した。つぎにクロマト理論を基礎にTwoーcompartment(非平衡分配)拡散モデルを構築して肝局所動態解析に適用した。以下は今年度の研究成果である。 薬物として、βーラクタム抗生物質の1つであるcefiximeを取り上げた。この薬物は有意に腸肝循環(Enterohepatic Circulation)をおこすことが知られている。まず局所動態で重要な生理パラメ-タである潅流速度のcefiximeの肝局所への影響を調べた。潅流速度を6.4,11.3,14.1,16.3ml/minと変えたところ血液部体積V_B、補正拡散定数D_cは直線的に増加、分配比k'は単調に現象した。また分布容積V_Hは単調に増加した。通過率F_Hは潅流速度によらず90ー100%の値となった。これらの現象は潅流速度の増加とともに、血液部の断面積Aが増加することにより統一的に説明できた。つまり肝臓は血液流速の変化したがって、フレキシブルのその体積を変化させていることが予想できる。また推定されたパラメ-タを用いてシミュレ-ションしたところ、相対分散値σ^2/t^^ー_H^2は通常血液流速(約15ml/min)で極大となっていることがわかった。これは通常流速で血液が最適な混合状態となり、肝組織と血液が十分に接触していることを意味する。つぎに現在cefiximeの肝細胞を経て胆汁排泄する過程の新しい速度論モデルを構築した。このモデルをcefiximeの胆汁中排泄時間経過にMULTI(FILT)により当てはめたところ、肝細胞内拡散過程が律速であることが推定された。
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