研究概要 |
安定性と保存性に優れた実用的な人工固体酵素の開発を目的として,ポルフィリン金属錯体をイオン結合と物理吸着によって担持したイオン交換樹脂(MーP_r)ついて,種々の酵素様機能を検討と、その分析学的応用を試みた。その結果,本年度には次の知見と結果が得られた。 1.平成2年度にMn^<3+>ーテトラキス(スルホフェニル)ポルフィンを担持した陰イオン交換樹脂ダウエクッスMSAー1(MnTPPS_r)を固定化ペルオキシダ-ゼの代用として用いる過酸化水素のフロ-分析法を開発した。そこで,この方法の環境化学分析に応用するため,酸性雨とも関係する雨中の過酸化水素の定量に適用した。その結果,雨中の50ppb程度の過酸化水素を再現性よく高感度に定量できることがわかった。 2.Mn^<3+>ーテトラキス(1ーメチルピリジニウムー4ーイル)ボルフィンを担持した陽イオン交換樹脂ダウェックスMSCー1(MnTMPyP_r)及びMnTPPS_rのウリカ-ゼ様機能のメカニズムを共鳴ラマンスペクトル法などを用いて解析した。その結果,これらは,表面MーPの中心金属が3価⇔2価のサイクルを繰り返すことによって,尿酸を酸化し,ウリカ-ゼ機能を発揮することを明らかにした。 3.各種のMーP_rについてアスコルビン酸オキシダ-ゼ機能を検討した。その結果,コバルト,マンガン及び鉄ポルフィリン担持イオン交換樹脂が,アスコルビン酸に対するペルオキシダ-ゼ様機能をもつことがわかった。また,検討した中でも最大の活性を示すCoーTPPS_rは,臨床化学分析で妨害となるアスコルビン酸の除去に利用できる可能性があることも分かった。
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