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1990 年度 実績報告書

糖尿病治療効果を持つバナジウム錯体の生物無機化学

研究課題

研究課題/領域番号 02670982
研究機関徳島大学

研究代表者

桜井 弘  徳島大学, 薬学部, 助教授 (30065916)

キーワード糖尿病 / 血糖値 / バナジウム錯体 / インスリン / 脂肪細胞 / 電子スピン共鳴(ESR)
研究概要

ラットにおいて毒性が低いことが知られている4価バナジウム錯体に、糖尿病治療効果があるかどうかを研究した。まず、ストレプトゾトシンにより高血糖状態としたラットに硫酸バナジルを、毎日1回腹腔内に投与したところ、投与2日後には血糖値は正常となり、以後これを持続した。この現象を明らかにするため、グルコ-ス負荷試験を行ったところ、バナジウムを投与したラットは、正常ラットと同様の挙動を示し、糖尿病は見掛け上治癒されていると判断された。一方、血清中のインスリン濃度を定量したところ、治癒されたラットでは、インスリン濃度は糖尿病ラットのそれと同様に低い値を示した。したがって、バナジウムはすい臓に作用してインスリンの生成合を促進したり、分泌を促すものではないと推定された。そこで、ラットの副こう丸から採取した脂肪細胞を用いて、放射性グルコ-スの取り込みを検討したところ、4価バナジルイオンはインスリンと同様に、濃度依存的にグルコ-スの細胞内への取り込みを促進することが見出された。バナジウムは、全身の細胞に作用し、インスリンレセプタ-に作用しグルコ-スの血液から細胞内への取り込みを促進していると考えた。次に、血糖降下作用を示すバナジウムの活性型について検討した。4価あるいは5価バナジウムをラットに投与すると、80ー100%は4価型で存在することを見出している。バナジウムで治癒されたラット組織中のバナジウムの酸化状態と総バナジウム量を電子スピン共鳴(ESR)法を用いて検討したところ、組織内のバナジウムは殆どが4価型であり、生体酸素配位子と結合していること、さらにバナジウムは全身に広く分布していることが見出された。現在、さらに種々のバナジウム錯体を合成し、それらの物性と薬理作用との関係を生物無機化学的観点から研究を続けている。

  • 研究成果

    (5件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (5件)

  • [文献書誌] H.Sakurai and K.Tsuchiya: "A Biomimetic Model of Vanadiumーcontaining Bromoperoxidase" FEBS Letters. 260. 109-112 (1990)

  • [文献書誌] H.Sakurai,K.Tsuchiya,M.Nutatsuka,M.Sofue and J.Kawada: "Insulineーlike Effect of Vanadyl Ion on StreptozotocinーInduced Diabetic Rats" Journal of Endocrinology. 126. 451-459 (1990)

  • [文献書誌] H.Sakurai,K.Tsuchiya,M.Nutatsuka,J.Kawada,S.Ishikawa,H.Yosida and M.Komatsu: "Insulinーmimetic Action of Vanadyl Complexes" Journal of Clinical Biochemistry and Nutrition. 8. 193-200 (1990)

  • [文献書誌] 桜井 弘: "バナジウムの生体濃縮と生理作用" 細胞. 22. 13-17 (1990)

  • [文献書誌] 桜井 弘: "バナジウムの生理作用" 油化学. 39. 791-797 (1990)

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公開日: 1993-08-11   更新日: 2016-04-21  

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