研究概要 |
1.ニワトリ卵白リゾチ-ム(Lyzm)を,4つのSーS結合を保持したまま,6M Guanidinium Chloride(GdnHCl)または8M Ureaに溶解させた。CD測定および酵素活性の測定により,GdnHClに溶解した前者はrandom coil状態になっており,不活性であるのに対し,Ureaに溶解した後者は8M Urea中でもCDでみて高次構造を保持しており,活性を示すことが分った。この2つの試料液は夫々100倍希釈,20倍希釈することにより,ほぼNative Lysmと同じ活性を復元した。活性測定に際し,溶液中のイオン強度が十分低くなるように留意すべきことは昨年度の報告に記した通りである。 2.6M GdnHClと略同等の変性効果をもつためには,Ureaを用いた場合,6M Urea+6M LiClとする必要があった。タンパク質の高次構造を支えている結合力のうち,イオン性相互作用と疎水性相互作用には注目した場合,この事実はGdnHClがイオン性と疎水性の両方に作用しているのに対し,Ureaは疎水性相互作用に限って効果を及ぼしていると解釈することができる。Urea+LiClとすることにより変性の効力を2つの要素に仕分け出来た訳で,UreaとLiClの濃度を色々に変えてCDを測定したとき、Lyzm特有の高次精造崩壊の相図を作成することができた。(Chem.Pharm.Bull,'92)種々のタンパク質の高次構造を現定する特性の1つと考えられ,この種の相図をそのタンパクのRefoldingの指針として利用できると思われる。 3.Intactな非還元Lyzmでは誘導物質の存在なしにほぼ100%refoldできるので,4つのSーS結合を還元開製したTotally reduced Lyzmを用いて現在refolding実験を進めている。この試料ならば入手困難なNucleaseの代替の役目を十分に果しうる。現時点で95%のrefolding達成率を得ている。今後このrefolding手順のどのprocessに誘導物質の共存効果が現われるかに焦点を絞って研究を進めたい。
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