研究概要 |
1.アクラシノマイシン,アドリアマイシン,ダウノマイシン,ブレオマイシン,ソラレン,ディスタマイシン,ヘキスト33258,ダ-ピ-(4,6ーdiaminoー2ーphenylーindole dihydrochloride)について可視・紫外スペクトル,蛍光スペクトル,円偏光二色性スペクトルの予備的調査を行ない,これからが皆互いに異なる特徴を有することを知った。 2.ディスタマイシンについては,これがDNA二重らせんに結合したときにおこるラマンスペクトル上の変化をこの薬剤分子の変形によって説明することができた。そして,この変形はDNAの塩基配列によって著しく異なることを見出した。この変形は…AAAA・TTTT…のようにホモポリマ-どうしの間のA・T塩基対部位で大きく,AT交互配列のA・T部位ではこれよりも小さいこと,そしてG・C部位ではそのどちらよりも著しく弱いことが示された。 3.アクラシノマイシンの発色団はDNA二重らせんのAT部位に選択的にインタ-カレ-ト(挿入)されるといわれて来た。これはアドリアマイシン,ダウノマイシン,ノガラマイシン等の発色団がいずれもGC部位に選択的にインタ-カレ-トされ事実と対照的である。それ故この点を明確にするため,d(CGTACG)_2というDNA二重らせん断片分子とアクラシノマイシンとの結合を詳細にしらべた。何故なら,この断片分子についてダウノマイシンやノガラマイシンの結合が過去において調査されて来ているので,同じ相手に対してアクラシノマイシンがどういう挙動をとるかを明らかにすることが肝要と考えられたからである。ラマン分光ならびに核磁気共鳴実験の結果,アクラシノマイシンは確かにこのDNA断片の中央のTA部位に挿入されることが示された。同時に,アクラシノマイシンのトリサッカライド部分がDNAとどのように相互作用するのかも明らかになった。
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