研究概要 |
薬物の体内挙動を無侵襲かつリアルタイムで測定する新しい方法として、LーバンドESRスペクトルをコンピュ-タ解析し、画像解析するための基礎研究として、以下のことを検討した。 1.筋肉内での薬物の挙動のシュミレ-ションによる解析:ESRスペクトルはスピン濃度によりシグナルが変化する。4種のニトロキシド誘導体(HydroxyーTEMPO,AminoーTEMPO,CarbamoylーPROXYL,CarboxyーPROXYL)の水溶液をマウスの大腿部に投与し、ESR測定を行った。このスペクトルは複数のスピン濃度のものの示すシグナルが重なりあったものであり,経時的にその形状が変化した。スペクトルを数種の濃度のシグナルを用いシュミレ-ションを行い、スピン標識化合物の筋肉内拡散や筋以外への移行を分単位で解析・推定することができた。 2.病態モデルとしての炎症のスピンクリアランスへの影響:マウス後肢を結索して虚血足浮腫マウスを作成し、その大腿部にスピンラベル剤水溶液を投与しESR測定を行った。虚血時には、CarbamoylーPROXYLはシグナルの減少が認められなかったのに対し、AminoーTEMPOでは認められ、前者は筋肉内でスピンが消失され難く、後者は消失されることが示された。また虚血再潅流後では、CarbamoylーPROXYLの消失速度がコントロ-ルと有意な差が認められないが、AminoーTEMPOでは、ほとんどシグナルが観測されず、速やかにスピンが消失した。 3.画像化のためのコンピュ-タプログラムの開発:複数のシグナルからなるinvivoESRスペクトルを用い薬物の挙動をより詳細に検討するためにはスペクトルを分離する必要があり、新たにプログラムの開発を試みた。スピン化合物の濃度によるシグナルの変化は非常に複雑で、幾つもの解決すべき因子があり、それらを検討しながら、プログラムの開発を行っている。
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