これまで我々は、アスコルビン酸(AsA)の安定型誘導体である2-O-α-Dグルコピラノシル-L-アスコルビン酸(AA-2G)が、哺乳動物α-グルコシダーゼ、イネ種子α-グリコシダーゼやバチラス属CGTaseの糖転移反応により合成され、動物の細胞や生体に投与するとビタミンC活性を発揮することを見いだした。さらにこのものは、AsA同様コラーゲン合成をも促進することを証明した。 今回は、本化合物の免疫活性を調べると共に、活性酸素障害治療薬としての可能性を追究する目的で、若干の研究を行なった。その結果、(1)AsAは、in vitro脾細胞培養系において、培養開始時にその適当量を添加しても免疫賦活作用は認められなかったが、AA-2Gには強い免疫賦活作用が認められた。(2)そこで、この原因がAsAの不安定性に基づくものと考え、頻回添加を試みたところ、AsAにもAA-2G同様の活性が認められるようになった。(3)AA-2Gのこの作用はα-グルコシダーゼ阻害剤キャスタノスペルミンの存在下では消失した。以上の知見は、AA-2Gの作用は細胞表面又は細胞内で酵素的にAsAが適量かつ持続的に遊離され、遊離されたAsAが免疫賦活作用をを示していることを示唆するものである。(4)次に白血球や鶏胚線維芽細胞を用いて、in vitro実験でAsAとAA-2Gの細胞障害性を比較したところ、0.5mM以上においてAsAに強いラジカル反応に基づく細胞障害性が見られたのに対し、AA-2Gには全くそのような障害性は認められなかった。この障害性はカタラーゼの添加で抑制された。(5)さらにAsAとAA-2Gを培養細胞に添加し、細胞内に取り込まれたAsA含量を調べたところ、AsA添加時には、きわめて大量のAsAが細胞内に認められたが、AA-2G投与の場合には少量であった。両者の生物活性が同等に認められることから、過剰に取り込まれたAsAが細胞障害の原因と考えられた。(6)鶏胚を用いたハイドロコーチゾン誘導白内障のモデルに対し、AA-2GはAsAに比べ有意に強くこれを抑制した。この原因としてグルタチオンの増量が示唆された。AsAとAA-2Gに関し、活性酵素のスカベンチャーとしての有効性については小腸刷子縁膜の脂質過酸化に対する抑制作用の予備的検討を現在行っている。
|