シチジレ-トシクラ-ゼはラットヤやマウスの全脳膜画分中に存在するサイクリックCMP(cCMP)の生合成酵素である。本刊素の性状を膜画分レベルで調べたところ、AlCl_4^-やグアノシン5′ー0(3ーチオトリホスフェ-ト)(GTRγS)の前処理で効率よく活性化されること、GTRγSによる活性化がグアノシン5′ー0ー(2ージホスフェ-ト)(GDPβS)によって阻害されることが明らかになり、アデニレ-トシクラ-ゼの活性発現機構におけるGTP結合蛋白質(G蛋白)の関与と同様にシチジレ-トクラ-ゼの活性発現にもある種のG蛋白が重要な役割を果していることが初めて認められた。さらに、アデニレ-トシクラ-ゼとは異なる機序の調節を受ける酵素であることも確認された(以上の成果については、現在投稿論文を作成中である)。本酵素のラット脳膜画分からの精製はGTPγS処理による活性化、CHAPSによる可溶化、ゲルろ過、イオン交換クロマト操作で行ない修分精製標品を得、分子量の推定を行なったところである。しかし、完全精製に至っておとらず本酵素の分子的性状は解明出来ないため、現在電気泳動法による高度精製を試みている。また本酵素の脳内発現や生理的リガンドの探索は現在進行中である(これらの成果の一部は第64回日本生化学会(平成3年10月)で発表した)。シチジレ-トシクラ-ゼの生成物であるcCMPの生理作用については主にラット神経芽細胞腫PC12株を用いてその結経突起形成に及ぼす作用を調べた。cCMPの膜透過型誘導体ジブチリルcCMPはPC12細胞に対し有効に神経突起形成を誘導したが、その機序は神経成長因子(NGF)とは異なっていた。さらにこの突起形成に及ぼす短鎖脂肪酸の影響を調べた特に酪酸の用量依存的な抑制作用を認め、神経突起形成制御に興味ある事実を発見した(これらの成果は第64回日本生化学会で発表し、さらに現在投稿論文を作成中である)。
|