研究概要 |
抗虚血活性薬剤候補物質としてチアジアゾ-ル誘導体については昨年度からの研究を継続し,新たにシクロデキストリンーステロイドコンプレックスを加え,分子設計した.まずチアジアゾ-ル誘導体についてはTXー106から109までの4種類の新規合成,ラットおよびカメ肝臓ミトコンドリアを用いる呼吸活性およびインビボでの抗虚血作用を調べた.昨年設備備品として設上購入した液体クロマトグラフィ用UV検出器は,上記の合成反応物の分離,分析,精製に活躍した.次に生物活性について好低酸素性動物モデルである淡水産のカメ(イシガメ及びクサガメ)を用い,敏速に活臓から単離したミトコンドリア(RCI=ca.3)を使い,高感度センサ-付きの生物機能測定用セルを用い,そのエネルギ-代謝特に呼吸活性およびATP合成能に及ぼす上述のチアジアゾ-ル誘導体の効果を調べた.その結果,TXー109がstate4呼吸を完全に開放したが,その時の酸素消費速度は14natomsO/min/mg proteinとラットに比べ低い値であった[TXー109:45nM(Vox max;340natomsO/min/mg protein)].ところでカメ肝臓ミトコンドリアの単離において,それらのサイズがラットより小さく,ラットでの一般的な単離法を準拠できず,最適な単離法を検討することにし,今年度やっと安定した単離法を確立することができた.さらにチアジアゾ-ル誘導体について,インビボでの抗虚血活性を調べる目的で,マウスの断頭時のあえぎ呼吸(gasping)に対する影響を検討した.その結果すべての誘導体について100mg/kg i.p.でgasping時間の延長が見られ,抗脳虚血活性をもつことが示された.
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