研究概要 |
ストレスなど環境刺激によるモルヒネ鎮痛効果に対する耐性形成の抑制機構を解明する目的で、本年度の研究実施計画に沿って以下の実験を行った。 1.環境刺験によるモルヒネ依存形成の抑制は現在の条件では認められず、さらに詳細な研究を検討中である。 2.μー受容体作動薬であるモルヒネ耐性形成が、κー受容体を介して鎮痛効果を発現する心理的ストレスの併用負荷によって抑制されることから、この機構におけるκ受容体の役割を検討した。コミュニケ-ション箱を用いた心理的ストレスの併用負荷によるモルヒネ10mg/kgの連日反復投与による耐性形成の抑制は、κ選択的拮抗薬norーbinaltorphimeneの前処置によって消失した。また、心理的ストレス負荷を、κ受容体作動薬Uー50,488H投与に置き換えても、耐性形成抑制効果は維持された。これらの成績はモルヒネ耐性形成に受容体サブタイプ、特にμとκ受容体間の相互作用が関与することを示唆している。なお、フットショックストレス負荷による耐性形成抑制は、このκ受容体拮抗薬処置によっても抑制されず、異なった機構が考えられる。 3.心理的ストレス負荷による耐性形成抑制に、不安、恐怖など情動要因などが関与する可能性がある。そこで、実験的、臨床的に抗不安作用を有するdiazepam,buspirone,Yー25,130を前処置したところ、いずれも用量依存的に心理的ストレスによる効果を消失させた。 以上、心理的ストレス負荷によるモルヒネ耐性形成には、オピオイド受容体サブタイプ間の相互作用のみならず、不安、恐怖など情動要因も寄与することが示唆されたが、両者の関連については目下検討中である。また、抗不安薬による上記の効果から、本法の新規抗不安薬スクリ-ニング法としての可能性を見いだした。
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