アルデヒド類は求電子反応性を有し、生理的条件下で生体成分を化学修飾する。本研究では、生体中で生成するアルデヒド類が蛋白質などの生体成分を化学修飾することにより、DNA修復酵素の遺伝子群の発現にどのような影響を及ぼすかを検討し、その分子機構を明らかにすることを目的として行った。(1)DNA修復酵素として異なった機構で調節されているada遺伝子とumuDC遺伝子を選び、これら遺伝子の発現をプロモ-タ領域とβーgalactosidaseの融合遺伝子であるada'ーlacZ'、umuCD'ーlacZ'を有する大腸菌より産生されるβーgalactosidase活性を指標にして検討した。用いたアルデヒド類のうち、ホルムアルデヒドがメチル化剤によるada遺伝子の発現を抑制することを見出した。しかし、ホルムアルデヒドは、メチル化剤の非存在下によっても観察される低レベルのada遺伝子の発現に対しては影響を与えなかった。(2)活性酵素、あるいは、熱によって誘導される遺伝子の発現に対するアルデヒド類の影響を検討した。先ず、過酸化水素により誘導され、過酸化水素の消去に関与しているkatG遺伝子の発現に対する影響を検討するために、遺伝子発現の検出法について検討を行った。katG遺伝子の発現はoxyR遺伝子産物によって制御されることが知られているが、katG遺伝子の発現は短時間に起こり、また、大腸菌の培養条件によって発現量が著しく変動する。このために、現在のところアルデヒド類の影響を検討するための満足できる実験系を確立するに至っていない。(3)金属イオンの毒性発現には活性酸素が関与していることが最近明らかとなっている。カドミウム、水銀、銅などの金属イオンは、DNA修復酵素の1つであるO^6ーmethylguanineーDNA methyltransferaseをコ-ドするada遺伝子の転写を阻害する。これらの金属は、金属自体が遺伝子の転写促進因子に配位することによりada遺伝子の転写を阻害することが明らかとなった。
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