研究概要 |
1.ウサギ心膜腔からmesothelial細胞を分離培養する方法を確立した。 2.この細胞を用いてIGFーI(インシュリン様成長因子ーI)とEGF(上皮成長因子)のヒアルロン酸合成に対する併用効果の有無を調べた。心膜細胞に対してIGFーIとEGFを同時に併用処理すると,IGFーI,あるいは,EGF単独処理の場合と比べてヒアルロン酸合成,ヒアルロン酸合成酵素活性ともに相乗的に増大した。しかし,硫酸化されたグリコサミノグリカン合成に対しては作用を示さなかった。 3.IGFーIとEGFの受容体の細胞内ドメインには受容体型チロシンキナ-ゼが存在する。そこで,チロシンキナ-ゼに特異的な阻害剤ゲニステインで細胞を前処理したところ,これらの成長因子により惹起されるヒアルロン酸合成,ヒアルロン酸合成酵素活性の増大は阻害された。また,ゲニステインそれ自体にはヒアルロン酸合成酵素活性を直接阻害する作用は認められなかった。 本研究から,本細胞にはIGFーIとEGFの併用によりヒアルロン酸合成が相乗的に増大する細胞応答が認められ,その応答にはIGFーIとEGFの受容体に存在するチロシンキナ-ゼ系の情報伝達がかかわることを初めて示唆することができた。
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