研究概要 |
表面を単層扁平上皮性の中皮細胞で覆われている心膜は、心膜腔を形成し、その中に心膜液を貯えている。最近、心膜がプロスタサイクリン,プロスタグランジンE_2(PGE_2)やヒアルロン酸(HA)を生合成することが判明し、生理学的にも極めて重要な役割を有する組織であることが次第に明らかになってきた。前年度に、ウサギ心膜細胞が産生・遊離するPGE_2は、cAMPを経由する細胞内情報伝達系を介してHAを合成促進する事を明らかとしたので、最終年度の本年度は、残りの課題について検討を加え、以下の研究成果を得た。ウサギ心膜腔より分離培養した心膜細胞を用いて、本細胞にIL-1Bを添加すると、血清存在下ではIL-1Bの濃度を0.25V/mlから2V/mlと増大させるとPGE_2の産生は促進されたが、血清非存在下では促進されなかった。このことは、IL-1Bと血清中の因子の相互作用によりPGE_2産生が促進されている可能性と血清によりIL-1受容体の発現が保持され反応する可能性のいずれかが考えられる。いずれにせよ、心膜炎などの病態時にIL-1等でPGE_2が異常に産生亢進し、それにより心膜細胞のCAMPを経由する経路を介して1gで6lの水を吸収、水和する能力のある高分子HAが合成促進される可能性は充分考えられる。本研究は、これまで不明であった心液貯留現象の因果関係の一端を生化学的に説明する根拠を与えたものと考える。
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