研究概要 |
研究計画書に記載した通り、小脳の初代培養系を実験系として用いるため卓上型クリ-ンベンチを設備備品として購入した。これにより培養実験が可能となり、培養した神経細胞を以下の実験に用いた。最初に受容体結合実験からGABA受容体の性質をアゴニストの^3HーGABAと最近合成されたGABAアンタゴニストの一つである^3HーSR 95531を用いて検討した。膜標品をphospholipase A_2(PLase A_2)で前処置したときの両リガンド結合に及ぼす影響を前皮質、小脳および小脳神経細胞の培養系で検討した結果、外因性のPLase A_2はGABA_A受容体をアゴニストが結合しやすい型へ変換することを誘発し、これが膜リン脂質の代謝産物であるarachidonic acidやlysophosphatidylーcholineによるものであることが明らかとなった。次にラット大脳皮質のシナプトニュ-ロソ-ム(SNS)を調製し、GABA受容体に共役する^<36>Clイオンの取り込み系実験を調べた。SNSへの^<36>Clイオンの取り込みはGABAアゴニストのmuscimolにより増大した。この増大した^<36>Clイオンの取り込みに対し、従来から用いられてきたGABAアンタゴニスト、bicucullineのmethohalide塩の1つであるbicuculline methiodide,BMIとSR 95531の効果を比較検討したところ、両アンタゴニストともに濃度依存的な抑制を示した。両アンタゴニストのIC_<50>値の比較から、SR 95531の抑制効果はBMIの15倍強力であった。以上の結果からSR 95531は強力なGABAアンタゴニストであるが、その受容体結合の性質は従来から報告されてきたアゴニストのものとはかなり異なっていることが判明した。培養細胞におけるGABA受容体に共役する^<36>Clイオンの取り込み機構については現在検討を行ないつつある。来年度についても当初の計画の通り行なう予定である。
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