前年度成果から、ジデカノイルホスファチジン酸(C_<10>PA)が、血小板のホスホリバ-ゼ(PL)Cを活性化し、刺激を増幅する役割を持つことが判明したので、本年度は刺激下に生理的に生成され得る1ーステアロイル2ーアラキドノイルPA(SAPA)の同様な効果を検討すると共に、肥満細胞におけるC_<10>PAの効果についても検索し、以下の結果を得た。 1.血小板にSAPA(〜60μM)を添加すると、濃度依存的な凝集と共に、アラキドン酸(AA)遊離とジアシルグリセロ-ル(DG)生成が、外部Ca^<2+>依存的に生じた。しかし20μMまでの低濃度域では、AA代謝阻害剤により凝集およびDG生成は抑制された。またこのAA遊離はPLA_2阻害剤であるpープロモフェナシルブロマイド(BPB)等で抑制された。 2.NaF+AlCl_3で前処理してもこれら反応は影響されなかった。 3.血小板膜画分にCa^<2+>存在下にSAPAを添加してもAA遊離が生じた。 4.ラット腹腔肥満細胞にC_<10>PAを添加すると、濃度依存的なヒスタミン遊離、AA遊離およびDG生成が生じた。しかしCa^<2+>無添加ではこれら反応は生じなかった。また百日咳毒素(IAP)処理によってもAA遊離およびDG生成は影響を受けなかった。 5.サポニン透過性肥満細胞にCa^<2+>存在下でC_<10>PAを添加してもAA遊離およびDG生成は濃度依存的に増大した。この増大はGDPβSを添加しても影響を受けなかったが、BPB処理でAA遊離が抑離された。 以上の結果から、血小板ではSAPAは、低濃度でPLA_2を活性化することが判明し、従って生理的にはPAは、主にPLA_2活性の増幅の寄与しているものと思われる。肥満細胞においてもPAは、PLA_2、PLC共に活性化し、ヒスタミン遊離を誘起したことから、その生理的役割が示唆された。これら反応はいずれも受容体を介するこのではないことも判明した。
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