研究概要 |
1.ホスホリパ-ゼA_2(PLA_2)は一次構造上の特徴から2つのグル-プ(IとII)に分類されている。コブラ毒、ウシ膵臓PLA_2(グル-プI)、マムシ毒、ハブ毒(グル-プII)PLA_2の単分子分散状およびミセル状基質を用いる酵素反応におけるCa^<2+>の役割を調べたところ、Ca^<2+>の結合は触媒作用に必須であるが、酵素ー基質複合体の形成におけるCa^<2+>の役割はグル-プIとIIで異なることが明らかとなった(日本薬学会第111年会(1991)、発表予定)。 2.Ca^<2+>の同族金属イオン(Sr^<2+>、Ba^<2+>)についてマムシ毒、ハブ毒(グル-プII)およびウミヘビ毒(グル-プI)PLA_2との相互作用を調べたところ、Ca^<2+>と同様の結合様式であることがわかった。またイオン半径がCa^<2+>と極めて似ている種々のランタニドイオンの存在下酵素活性を測定したところ、Ca^<2+>に近いイオン半径のランタニドイオンではCa^<2+>の場合の10ー20%の酵素活性がみられ、触媒中心活性kcatはCa^<2+>のイオン半径付近に極大値を持つベル型のイオン半径依存性を示した(第41回タンパク質構造討論会)。 3.種々のPLA_2について単分子分散状およびミセル状基質に対する酵素反応速度論のパラメ-タのpH依存性を比較したところ、基質ミセルとの結合に伴って触媒基His48とその近傍に存在するTyr52のpK値が著しく増大すること、またこの現象がグル-プIとIIのPLA_2で共通であることを発見した。さらに上記の結果から、PLA_2の界面認識部位とミセルとの相互作用に伴いその部位に存在すると思われるTyr73付近の誘電率が低下し、活性部位の水素結合が強まるために、pK値が増大するというミセル認識機構の仮説を提案した(J.Biochem.108,21ー27(1990)).
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