研究概要 |
グループIとIIに属する数種のPLA_2について,単分子分散状およびミセル状レシチンを基質とする酵素反応速度論のパラメータのpHおよびCa^<2+>濃度依存性を調べた結果,触媒基His48とTyr52が触媒作用に重要であり,グループ1のPLA_2はさらに,N末端残基のα-アミノ基も重要であることを明きらかにした.また,ミセル状基質に対するすべてのPLA_2の結合定数はpHに依存し,His48とTyr52の側鎖のpK値はミセル状基質の結合に伴って増大するが,単分子分散状基質の結合の場合にはほとんど変動しないことがわかった.一方,グループIIの酵素と基質の結合定数は Ca_<2+>の酵素への結合に伴って著しく増大するが,グループIの酵素と基質と結合定数はCa^<2+>の結合によって変化しなかった.この結果は,結合Ca^<2+>が酵素と基質の反応中間体の構造を安定化するというこれまでの触媒機構の仮説と一見矛盾するように思われた.そこで,2位のエステル結合をアミド結合に置換したアミド型基質アナログを用い,両グループに属するPLA_2について,単分子分散状短鎖レシチンを基質とする酵素反応に対する阻害のCa^<2+>濃度依存性を詳細に調べた。その結果,両グループの酵素に対する基質アナログの結合定数はすべて,Ca^<2+>の結合に伴って著しく増大することがわかった.この結果は,溶液中における酵素・Ca^<2+>・基質アナログ複合体の構造が,PLA_2のグループによらず互いによく似ており,Ca^<2+>の結合によって酵素・基質複合体の構造が安定化されることを示す.酵素・Ca^<2+>・真の基質複合体もまた同様に,酵素のグループによらずよく似た構造を持つと思われるが,グループ1の酵素の場合,アポ酵素と真の基質の複合体は,すでにCa^<2+>複合体様の構造を持っているため,Ca^<2+>が結合しても基質の結合定数は変化しないと考えられた.
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