研究概要 |
我々がこれまでに合成した新規D_3誘導体の22ーOxaー1,25(OH)_2D_3(Oxaーcalcitriol:OCT)並びに2βー(3ーHydroxypropoxy)ー1,25(OH)_2D_3(Hydroxyーpropoxycalcitriol:HCT)について,1,25(OH)_2と比較しながら検討を行い,以下の知見を得た。 1.OCTは,in vitroの骨吸収実験で1,25(OH)_2D_3と同等のCa作用を示すものの,反転腸管を用いるex vivoの腸管Ca吸収実験やin vivoにおける骨塩動員作用では1,25(OH)_2D_3とは異なり,全くCa作用を示さない新規D_3誘導体である。また,OCTの分化誘導能は1,25(OH)_2D_3よりも約10倍高く,1,25(OH)_2D_3以上の免疫調節作用や副甲状腺機能亢進の低下作用を示すことが報告されている。このOCTと1.25(OH)_2D_3の作用発現の相違について,血中の輸送機構と体内動態,組織移行性を検討した。ビタミンD結合蛋白質(DBP)との結合性を調べた結果,OCTは1,25(OH)_2D_3などのビタミンD代謝物と特異的に結合するDBPとはほとんど結合せず,血液中では主としてリポ蛋白質と非特異的に結合して運搬されることを明らかにした。また, ^3HーOCTを合成し,ラットの体内動態を調べた結果,OCTの血中消失速度は極めて速く,グルクロン酸抱合体として速やかに胆汁中に排泄されることを確認した。しかし,投与初期におけるOCTの胸腺,甲状腺,副甲状腺等への移行率は1,25(OH)_2D_3よりも有意に高いことを確認し,OCTがCa作用を示さずに,免疫調節や副甲状腺機能亢進の低下に選択的に作用する理由がこのような性質によるものであるとの示唆を与えた。 2.血液中のHCTの定量法を確立し,in vivoでのHCTの血中動態を検討した結果,1,25(OH)_2D_3よりもマイルドかつ持続的に残存し,しかも1,25(OH)_2D_3以上に強いCa作用を発揮することを明らかにして,HCTが有望な骨粗鬆症治療薬候補であることを示した。
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