平成2年度に行った研究について以下要約する。 1.SV40DNAのin vitro複製系を用いて紫外線のDNA複製に及ぼす影響を解析した。この系においては、SV40の複製開始点を持つプラスミドDNAを鋳型として、HeLa細胞抽出液(ヒトまたはアフリカミドリザル細胞抽出液)により、効率の良いin vitro DNA合成がみられ、また、複製反応を、開始過程と伸長過程に分けて観察することができる。鋳型となるプラスミドDNAにあらかじめ紫外線照射を行うことにより、DNA複製は、阻害された。さらに、このDNAを本研究で開発したin Vitroの修復系を用いて修復反応をおこなった後に再度複製活性の測定を行った結果、複製活性は回復し、修復系が正しく機能していることが確認された。 2.SV40DNAのin vitro複製系に用いるコンポ-ネントを利用して、in vitroで修復合成がみられる実験系をすでに開発しているが、開発した系の基本的な性格の解析を行った。その結果、系に加える各コンポ-ネントについての至適条件が決定された。 3.in vitroの修復反応を幾つかの素過程に分け、それぞれの反応様式についての解析を試みた。特に、DNA合成酵素の阻害剤を用いることにより、修復反応の開始過程だけを観察することに成功した。修復合成過程と比べて開始の過程は比較的その速度が低いことが示された。
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