研究概要 |
培養血管内皮細胞の機能発現に及ぼす細胞外基質の影響を検討した。有血清下では血清中のフィブロネクチンの影響を受けて細胞外基質の効果が修飾されている可能性がある。そこで今年度はまず培養液の改良を試み,プラスチィック上ではほとんど増殖しないが、フィブロネクチンコ-トディッシュ上では20%血清並の細胞増殖を示す条件(1%血清に増殖因子を添加した培養液)を開発した。この条件下で,ヒト血管内皮細胞および平滑筋細胞を細胞外基質上(前年度の結果からフィブロネクチン,I型コラ-ゲン,およびV型コラ-ゲン選択)に培養した。内皮細胞では,フィブロネクチンおよびI型コラ-ゲンはプラスティックに比べ細胞接着を促進したが,V型コラ-ゲンは抑制的に作用した。また,フィブロネクチンとI型コラ-ゲンは20%血清並の細胞増殖促進効果を示した。ところが,V型コラ-ゲン上では,内皮細胞は培養時間の経過とともに基質面から剥離し,細胞増殖は観察されなかった。しかも24ー48時間後の接着細胞ではBrdUの取り込みは観察されなかった。この時,細胞内Fーアクチンは再構成さず,また接着斑も観察されなかった。加えて,培養液中に離脱した細胞は新たなI型コラ-ゲン上では接着,増殖することが出来た。これらの結果は,離脱した内皮細胞は分裂期の細胞ではなく,また傷害を受けた細胞でもないことを示している。一方,平滑節細胞は,フィブロネクチンやI型コラ-ゲンと同様V型コラ-ゲン上でも完全なFーアクチンを形成し,素早く増殖することが観察された。この様に,V型コラ-ゲンの作用は内皮細胞に特有な現象であり,V型コラ-ゲンはあたかも内皮細胞の接着を弱め基質からの脱離促進している様に見える。このことは生体内の血管で内皮細胞の基底膜直下にV型コラ-ゲンが存在することを併せ考えると,血管におけるV型コラ-ゲンの役割を示唆しているものと思われ興味深い。
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