研究概要 |
ヒト由来の血管内皮細胞および肺由来線維芽細胞,TIGー7細胞を用いた。本年度は,ヒトPDGFとTGFβ1の単離精製,ならびにそれらの抗体の作成に取りくみいずれも十分な成果をあげた。 1.細胞の無血清培養法の確立 TIGー7細胞の無血清培養法を確立した。合成基礎培地,MCDBー104に,インスリン,トランスフェリン,デキサメサゾンを加えると,TIGー7細胞の生存維持が可能になった。これにPDGF(10〜20ng)を加えると著しい細胞増殖がみられ,この増殖促進作用は,5〜10ng/mlのTGFβ1によって阻害された。PDGFとTGFβ1によって細胞の増殖が調節されることが明らかになった。血管内皮細胞の無血清培養法を現在検討している。 2.ヒト由来PDGFおよびTGFβ1の精製 有効期限切れの血小板濃縮血漿を出発材料として,ヒト血小板からPDGF(AB),TGFβ1の十分量の単離精製に成功した。 3.PDGFの抗体の作成 PDGFは,Aー鎖,Bー鎖のサブユニットのダイマ-であり,AA,AB,BBの3つのアイソフォ-ムがある。それぞれのアイソフォ-ムは生物活性を異にする。2.で得られたPDGF(AB)および,A鎖,B鎖の合成ペプチドを抗原として,多くの抗体を得た。それらの特異性を検討中であるが,A鎖,B鎖に特異的な抗体が得られたことが確認された。また,PDGF(AB)の中和抗体が得られた。 4.TGFβ1の抗体の作成 ヒトTGFβ1サブユニットの合成ペプチドを抗原として,その抗体の作成に成功した。 本年度は,実験系の確立を計り,ほゞそれを達成することができた。来年度以降,それらを用いて当初の計画にしたがって研究をすすめる予定である。
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