研究概要 |
TGFβはさい帯静脈由来内皮細胞(HUVEC)の増殖を阻害するが,HUVECのTGFβ応答性は細胞外基質の添加の有無,TGFβの濃度ならびにアイソフォームによって異なった。TGFβはHUVECのDNA合成を阻害しなかったので,増殖阻害は細胞外基質の調節を介した機構によると考えられた。また、継代を重ねた細胞ではTGFβ感受性の低下が認められた。一方,大網微小血管内皮細胞(HOMEC)においてはTGFβは若干の増殖阻害と顕著な細胞形態の変化を誘起した。アイソフォームによる違いはなかったが,TGFβの有効濃度は、1ng/ml程度以下であり,これ以上の濃度では効果がなかった。HUVECにはIIおよびVI型の,HOMECにはI,IIおよびIII型のTGFβレセプターの発現を認めた。 HUVECからFGFを除去するとアポトーシス様の細胞死(プログラム死)を誘導できる。死にコミットされた細胞は,基質からはく離し,クロマチン凝集や180bpの整数倍のDNA断片化をともない,再び通常条件に戻してももはや接着,増殖はしない。また,この細胞死はミクロヘキシミドによって抑制されることから,細胞死のために新たなタンパク合成が必要と思われた。この細胞死におけるコミットメントポイントの存在を調べた。この結果,(I)細胞死にコミットメントポイントが存在する,(II)細胞周期との間に密接な関連は見いだせなかった,(III)細胞死誘導時の細胞密度がコミットメントポイントに影郷した。一方,出血性の蛇毒液中に,この内皮細胞にアポトーシスを誘導する因子が存在することを見いだした。 In vivo においても,FGFが血管内皮細胞に直接作用していることがわかった。FGFを心筋コウソク部に投与すると,修復の進展がみられた。これは主に付近の血管新生によるものであった。サイトカインが治療薬に使われる可能性をひらいた知見であった。
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