ヒト赤血球は酸化型グルタチオンやグルタチオン抱合体を細胞外へ輸送する機構を有している。今回、ヒト赤血球を用いて酸化型グルタチオンとグルタチオン抱合体の膜輸送の機構を解明し、更に赤血球と肝組織よりこの膜輸送に関連すると考えられる新しい膜ATPaseを精製して構造解析を行うことを目的とした。(研究)酸化型グルタチオン依存性ATPaseの精製。ヒト肝約300gより細胞膜成分をsucroseを用いたdensity gradientによって調製し、更にトリトンXー100で可溶化後、超遠沈とSーhexylglutathione Sepahrose 6Bのアフィニテイ-カラムクロマトグラフィ-にかけ、その後Suprose 12のゲル濾過によって酵素を精製した。比活性約1.2units/mgの約100μgの酸化型グルタチオン依存性ATPaseの酵素標品が2画分得られた。一つは酸化型グルタチオンに対して親和性の強い酵素で(GSSGーATPase 1)、一つはグルタチオン抱合体に親和性を示す酵素であった(GSSGーATPase 2)。分子量は共に約3万であった。この酵素に対するポリクロナ-ル抗体を家兎で作製したところ、両酵素とも抗原性は共通であった。ヒト肝と同様に精製した赤血球からの酵素に対する抗体とも同一の抗原性を示した。この抗体とFITC conjugated抗兎IGーGマウスIGーGを用いてFlow Cytometryにて各細胞で検討すると、本酵素は、赤血球、赤芽球細胞、血小板、肝、腎で発現していることが明かとなった。現在酵素蛋白の一次構造を決定するために逆相クロマトグラフィ-にて解析中である。
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