研究概要 |
MRSAの保存株および信州大学附属病院の患者,保菌者そして汚染環境由来の菌株について,それらの薬剤(化学療法剤)感受性パタ-ン,生化学的性,コアグラ-ゼ型別,バクテリオファ-ジ型別(標準ファ-ジによる溶菌試験以外に,溶原ファ-ジ誘発試験を含む),バクテリオシン産生性,プラスミド保持の有無と,その制限酵素による切断パタ-ンによる型別,さらに最近になり染色体DNAのパルス電気泳動による泳動パタ-ンによる型別を追加して,これらの個々の型別法の成績の再現性の検討も含めて,疫学調査への応用を調べた。これらの実験は進行中なので結論は得られてないが,今迄の成績からは,バクテリオシン産生性はこれを産生する株が極めて少なく,またプラスミドに関する型別はプラスミドDNAの検出に困難が伴い,あまり型別法として実用性がないことが示唆された。しかし,他の種々の型別法の成績の可能な限りの組合せは,MRSAの疫学調査に有用であることが証明されつゝある。 信州大学附属病院の医療スタッフを含む約1000名についてのMRSA保菌検査を,鼻前庭部のスメア-を採取し,選択培地を使用して実施した。その結果,医師が1.5%,看護婦の3.5%について保菌者を認めた。しかし,それら以上の被検者については保菌者を検出できなかった。また,院内のMRSAの汚染状況を延べ約1,100ケ所について詳しく調べたところ,患者の行動する範囲は程度の差はあれ,汚染が証明された。
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