研究概要 |
本年度は代表的なMRSAの97株と,対照としてMSSA(メチシリン感受性黄色ブドウ球菌)の11株の計108株を選定して,それらについて,1)パルスフイ-ルド電気泳動(PFGE)によるゲノム解析,2)アルカリSDS法で分離したプラスミドDNAのアガロ-ス電気泳動による解析,3)ファ-ジ型別および 4)コアグラ-ゼ型別を実施した。 PFGEについてはSmaI制限酵素処理標品の泳動パタ-ンにより,13(I〜XIII)型に分類されたが,MRSAはI型(6種の亜型を含む)に42%が,II型(8種の亜型を含む)に41%が,そして17%がその他の5種の型に属した。MSSAは1株がII型であったのを除いて,MRSAには存在しない5種の型のいずれかに属した。プラスミドは制限酵素EcoRI処理および未処理のDNAについて解析したが,MRSAとMSSAのそれぞれ1株を除いて供試の98%にその存在が認められ,その分子サイズは約1.0kbから40kbの範囲にあり,82%は2種またはそれ以上の異った分子サイズのものが存在した。最も注目すべきことは,25kbの共通したプラスミドが,93%のMRSAについて,その由来とは奥関係に証明された事実である。このプラスミドはMSSAでは1株について証明されたのみである。ファ-ジ型別はMRSAでは10%,MSSAでは72%について型別が可能であった。また,コアグラ-ゼ型別はI型〜VIII型のうち,II型に属するものが98%でぁあった。 以上の知見と前年度に得られた成績から,MRSA感染の疫学調査のマ-カ-としては,PFGEによるゲノム解析,プラスミドDNA解析(特に20kb以上の分子サイズのもの>解析)およびIDテストのSPー18による生化学的性状による型別の成績を組合せたものが,最も正確であると結論された。
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