対象者が生活する社会環境の変化や習慣を加味して、全人格的に行う医療をプライマリ・ケアと定義、臓器別に専門分化した医療とともに、今後の我国における医療の両輪の一つと位置づけた。目的は以上の概念の医療を将来推進する人材を、大学教育の中で地域医療の現場と連携して、どのような方法で教育することがふさわしいかを試行的に研究する事にある。代表者らは、過去6年間にわたり、山間部の人口千人の地区(長尾町多和地区)を選び、当該地区の公立診療所を拠点に、プライマリ・ケア自体のすすめ方を研究しつつ、地区住民の理解を得ながら卒前の実地教育を試行した。本年度は、教育技法についての評価を行った。 (1)教育時期の変更(6年次から5年次へ)に対する問題点の検討 (1)基礎的臨床的知識については、個々の病態生理はほぼ習得できているが、症候、愁訴との関係づけが6年次より未熟である。 (2)一般的なコミュニケーションの態度は同等であったが、専門的な内容を一般人に伝え、理解を得る手順の理解が未熟である。 (3)診療方針の立案、手順の設定、意志決定能力などは未熟である。以上は他の臨床実習における経験の積み重ねが必要。卒後を通じて、目標設定と問題解決能力を高めるカリキュラム設計が必要と考えられた。 (2)受け入れ側住民の評価 健診や往診時に住民が自ら、学生に質問や指導教示するまでに定着し積極的な協力が得られるようになった。 (3)医療情報管理教育の手法の検討 特に必要性が指摘されるプライバシー保護に関する教育課題を検討。学生の多くは「プライバシー」自体が、「守秘」と考えている者が多く、「自己決定権」への認識の訂正とその方法論としてのインフォームドコンセントの「実技」指導の必要性を指摘したい。
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